桐間紗路研究所日報

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台風19号と川の水位ー速報

 台風19号で被災された全ての都県の皆様にお見舞い申し上げます

今回の水害で思ったこと

 台風の接近前に、今回の台風はレベル6だとかいろいろ言われていましたが(たぶんそれはデマだと思います)、まず私は降雨量予測をみて驚きました。強風域に入る前から関東は大雨の予測が出ていて、それが10時間以上は続くということで、風よりも雨を心配しました。そしてその心配は的中してしまいました。

 しかし、具体的にどこで雨に気をつければ良いのかわからず、江戸川区が水没だとか、実際に江戸川区ダンケルクの撤退作戦に匹敵する(?)大規模な避難勧告が出たり、情報がよくわからなかったような印象を受けました。また、東京湾での高潮災害が心配されましたが結果、江戸川や荒川はそこまで潮位の上昇はなかったようです。(※ただし静岡県と神奈川県小田原では観測史上最大の潮位になっています。)

 一方、「狩野川台風と同等」という事前の発表はかなり的を射ていた印象です。狩野川では氾濫こそなかったものの急激な水位の上昇があり、放水路は荒れ狂う水の流れが起きていました。また、狩野川台風で洪水を起こした鶴見川でも、早くから水位の上昇が認められ、一時危険な状況になりました。こちらでもおそらく災害の教訓により設けられた水防設備により、破滅的な状況は避けられたようです。

 この類似状況を引き起こした理由は、台風の進路にあると考えられます。 f:id:copuy:20191017073908p:plain

 wikipediaより引用 狩野川台風の進路はこのようになっていました。関東に直撃するルートです。台風は上陸すると勢力が弱まる傾向にあり、上陸せずに関東に接近するということは関東が危ないということです。では、台風19号ではどうだったでしょうか。

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 台風19号は結局このような進路を取りました。非常に似ていますね。したがって同じような場所が被害を被ることになったと思われます。

 そして、箱根や荒川、千曲川といった被害の多かった場所についてですが、これは、台風が反時計回りの風を生起させ、その風が関東平野西縁の山地にぶつかることで大量の降雨をもたらすものと思われます。これは阿武隈川で被害が多かった理由の説明にもなります。太平洋側からの風が阿武隈山地に衝突し降雨をもたらすわけです。

台風の通過と川の水位の関係(速報版)

 pythonのmatplotlibと、MatthewDaws氏TileMapBaseというモジュールを用い、地図にプロットしてみました。とりあえず関東でデータの取れた観測地点のみを用います。今回は関東のみですが、同じ手法で全国に拡大することもできるので今度阿武隈川千曲川広瀬川などでやってみたいです。

github.com

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 まず、台風上陸日の04:00の図です。青は台風の進路で、○が観測点、左上が時刻、右下がアメダスの1時間観測雨量と、一番下が台風19号の位置です。観測点の色は、11日19時の水位を0、計画高水位(堤防が溢水を防げるぎりぎりの高さ、という理解で良いと思います?)を100とした数値で塗っています。

 台風は強風域にもかかっていないような段階ですが、箱根では18mmの降雨があります。土砂降りレベルです。これで台風通過18時間前ですから驚きです。そして、相模川下流(一番左下の地点)で水位が黄色になっているのがわかります。

20ミリの雨、50ミリの雨、100ミリの雨…それってどんな雨? - ウェザーニュース

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 13時。八王子の浅川や鶴見川で水位の上昇が目立ちます。箱根では78mmの降雨があり、これは土砂災害が発生していてもおかしくないレベルです。また、埼玉県のときがわ町周辺の荒川水系での水位の上昇が目立ってきています。おそらくこの上流での降雨が多いのでしょう。後々できたら詳しく調べたいです。左下に薄くかかっている青い線と黄色の範囲が強風域です。(見づらくてすみません)

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 19時。赤い色、つまり溢水する可能性のある100に到達いしている地点が目立ちます。降雨は世田谷、松本で10mm程度ですが、本降りの雨が15時間は続いていると考えると、小さい川の水位が気になります。埼玉県あたりに薄く線がありますがそれより左下が暴風域です。

 これを見ると、多摩川の武蔵小杉付近の水位の上昇は、大河川にしては大きく、上流の降雨の多さや、河川の幅の狭さ、鶴見川のような遊水地が存在しない、などの要因で溢水しやすくなっているのかもしれないと思います。

 また、江戸川の中・下流あたりで60%くらいまで水位が上昇しています。

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 東京最接近時。多摩川の水位観測所が欠測しています。相模川での水位の上昇が激しくなっていますが、降雨が止んでいるのでぎりぎり持ったということになると思います。この時点で江戸川区河口域の水位の上昇がピークとなっていますので、高潮の影響ということかもしれません。

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 翌3時。石巻に台風があるにもかかわらず、右上に強風域がまだ見えます。多摩川水系での水位が下降しました。降雨が完全に止んでいるにもかかわらず、利根川、荒川の水位が上昇しています。相模川下流の水位は変化していません。緊急放流の影響、河川長が長い影響などもありそうです。

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 翌18時。利根川中流での水位が低下し、利根川下流が上昇し始めました。利根川では水の流れ下りが遅いのでしょうか。東京・神奈川では水位がかなり低下しています。しかし荒川ではそうでもありません。

 全時刻のまとめ動画です。利根川で水位がなかなか下がらないことが目立っています。

 あまり良い考察でもないし、肝心なデータが色々無いんですが、実は他にも取ることのできるデータはたくさんあって、多すぎるくらいなので、他にもこれからやれたら色々やっていこうと思います。